古典改訂からオリジナルまで数々のグランド・バレエを立て続けに世に送り出してきた熊川哲也の
次なる新作は、アンデルセンの童話「人魚姫」を題材にした『マーメイド』。
数ある熊川作品の中でも、とりわけ幅広い世代に根強い人気を誇る『くるみ割り人形』や
『シンデレラ』、そして昨年大きな話題を呼んだ新制作『眠れる森の美女』などが
すでに証明しているとおり、ファンタジー作品においても熊川の卓越した手腕は比類ない。
誰もが知る物語を新鮮に輝かせるストーリー展開の巧みさ、
非凡なる発想で生み出す劇場空間ならではの魔法のような瞬間の数々が彩る舞台は、
ファンタジーの世界を“今ここにある真実”だと、観客に信じさせてくれる。
熊川の手によって、時代を越えて愛される名作童話がバレエへと昇華し
子供はもちろん大人の我々をも、よりリアルな感動に導いてくれるのだ。
圧巻のスケールで描き出す神秘あふれる海底の世界、
人間界に憧れを抱いた人魚姫がたどる一途で切ない恋の顛末――。
Kバレエ25周年に贈る珠玉のファンタジー、この秋、世界初演!
指揮:井田勝大 管弦楽:シアター オーケストラ トウキョウ
《キャスト》
昼公演 マーメイド: 小林美奈 / プリンス : 堀内將平 / プリンセス:成田紗弥 / シャーク:杉野慧
夜公演 マーメイド: 飯島望未 / プリンス : 山本雅也 / プリンセス:日髙世菜 / シャーク:石橋奨也
※やむを得ない事情により、出演者等が変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。
あらすじ
海の近くの酒場。王子は身分を隠して友人たちや酒場の女たちと楽しんでいる。そこへ王子の父である王が現れ、誕 生日を迎えた王子に短剣をわたす。「お前もいい年齢なのだから航海という冒険に出るがよい。そしてこの海にいる幻の大クジラを仕留めてこい」と命じる。喜ぶ王子は友人たちと航海に向かうべく決起する。
様々な生物が生き生きと暮らす広大な海。 甲板に現れた王子一行は幻の鯨の登場に騒然とする。
海面から王子の姿を見たマーメイドは一 目で恋をしてしまう。イルカの群れを荒らすシャークに向かって王子 が銛を投げる。負傷し激怒したシャークは嵐を巻き起こし、王子たちの船は難破してしまう。海に落ちて溺れる王子を助け、岸へと運ぶマーメイド。
浜辺で横たわる王子をマーメイドは心配そうに見つめつつ、胸の高鳴りを抑えられない。王子は朦朧とした意識の中でマーメイド の顔を一瞬見るが、すぐにまた気を失ってしまう。物音がしてマーメ イドが隠れると、通りかかった修道女たちが王子のもとに。その中 の一人は、実は修道院に教育を受けにきているプリンセスだ。倒れている青年を助ける気がないプリンセスだが、彼の短剣の鞘に 付された王家の紋章に気づく。この青年が王子だと悟ったプリンセスは、目が覚めた王子に、我こそがあなたを助けたとばかりに振る舞う。王子は彼女が命の恩人だと信じてしまう。
海中に戻ったマーメイドは王子を想っている。仲間であるクマノ ミ、珊瑚たち、ロブスターに様子を聞かれ、「恋をしているの」と打ち 明け一緒に踊るマーメイド。 マーメイドは海の底に落ちていた王子の短剣を見つけ、王子と人間界への憧れはますます募っていく。父は激怒するが、マーメイドの理解者で ある 叔母が、シャークの元に行けば、人間界に行ける方 法を教えてもらえるとマーメイドに伝える。 シャークに会いに行ったマーメイドは、 声と引き換えに脚を授かる秘薬をもらう。しかしこの約束には「愛が実れば魂を得られるが、そうでなければ泡になってしまう」 という条件があった。マーメイドはためらうが薬をのみ、そして地上へと向かう......。