棟方志功(1903-1975)は、誰しもが耳にしたことがある著名な版画家の一人です。倭画(やまとが)や書、油絵なども描き、棟方自身がそれら全てを「藝業(げいごう)」と呼び多くの作品を残していますが、表現の広がりの一端に、6年8ヶ月を過ごした富山県福光町(現南砺市)での制作があったことは、あまり知られていません。
1945年、戦時疎開のため福光町に移住した棟方一家は、そこで文化人や宗教家、支援者らの人々に加えて、愛すべき自然と出会いました。この地での交流を通して、自身の内的世界を深めた棟方は、やがて「世界のムナカタ」と称せられるようになります。
本展は、棟方の制作活動の中で最も充実した福光時代に焦点をあてました。名前が知られるきっかけとなった「女人観世音板画巻」などの版画から、資料的な書簡にいたるまで、棟方の「藝業」をご覧いただきます。